タマビに関わるすべての人とつながるために ―「WEB芸術祭」の可能性に手探りで挑む―

2020/10/23

芸術祭実行委員長 藤本翔大 (彫刻学科)
芸術祭実行副委員長 中村麟太郎(環境デザイン学科)
広報局デザイン長 佐藤萌香 (情報デザイン学科)

新型コロナウイルス感染症による未曾有の災禍に、学園祭の中止を決定する美大が相次ぐ中で、「オンライン開催」(11.1-3)の果断な選択をした多摩美術大学。「タマビ芸術祭」といえば、企画から運営まですべて学生が手掛けているとは思えないほどの高いクオリティや独特の世界観が話題を呼び、毎年3、4万人が来場する地域の一大イベントだ。初のオンライン開催に試行錯誤しながら、「たくさんの人に、例年の本祭と同じくらい楽しんでもらいたい!」と奮闘する実行委員の3人に、開催に込めた思いや「180°」のテーマに託したメッセージ、コンテンツの見どころなどについて話を聞いた。

発信することを諦めたくない

インタビューに答える芸術祭実行委員たち

――中止という選択肢もあった中で、敢えてオンラインでの開催を選択したのは、どのような思いからだったのでしょうか?

多摩美生にとって芸術祭は、自分たちの作品やパフォーマンスを外部に発信する貴重な機会です。とても意義のある大きなイベントなので、これを失うということは皆、受け入れがたかった。簡単には諦められないという強い思いがあり、オンラインという新しい形での芸術祭に挑戦することにしました。

このコロナ禍で、今年入学した新1年生は、ほとんど学校に来られていません。来年多摩美を受けようと思っている受験生も、今年はオープンキャンパスや卒業制作展など大きなイベントが軒並み中止になってしまったので、多摩美のことを肌で知る機会がなく、どんな大学なのかよくわからない状況だと思います。そうした学内外のすべての学生のためにも、発信力は失いたくないという思いがありました。

――オンラインで開催することについて、学内の学生の反応は?

リアルでの開催はナシと決まった時は、皆とてもショックを受けていました。多摩美生は学科を超えた交流も多く、特にサークルの絆が固いんです。「クラブ棟」に集まって過ごす時間が多く、所属しているクラブ内の仲間同士はもちろん、他のクラブとの交流も盛んで、とにかく皆仲がいい。芸術祭は毎年、それぞれの団体が、自分たちがやってきたパフォーマンスを最大限に発揮できる場だったので、それができないとわかった時の落胆は大きかったです。

我々実行委員も同様でした。実行委員会は、「模擬店局」「中央ステージ局」「護美局」「広報局」「展示局」「フリーマーケット局」「企画局」「花火局」「装飾局」の9つの局に分かれ、それぞれ連携しながら活動しているのですが、局によって色が違うので、例年だとそういういろいろな顔が見られるのも楽しみのひとつでした。ですからオンライン開催に決まった時は、局員のモチベーションがなかなか上がらず、盛り上げるのに苦労しました。それだけ皆、本祭を楽しみにしていたんです。

でも、中止にしてゴールテープを切れないまま終わってしまうのはあまりにも残念ですし、来年もどうなるかわからないという状況の中で、後輩につなぐ道筋をある程度つくる必要もあるんじゃないかと。皆、そうして気持ちを切り替え、今はWEB芸術祭を成功させることだけを目標に、一丸となってラストスパートに取りかかっています。

再現性+WEBならではの表現法で、一味違うタマビワールドに

芸術祭メインビジュアル

――WEB芸術祭のテーマ「180°」には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?

テーマ自体は4月の段階から考えていました。その時点ではリアルでの開催を前提に、芸術祭を通して暗い気分が明るくなったり、価値観が変わったり、そういう変化のきっかけになるようなイベントにしたいという思いで「180°」というテーマに決定したんです。でも7月にオンライン開催が決まり、キャンパスからWEBに移行することになって芸術祭の在り方自体が一変し、我々の思いも自然と変わっていきました。この社会情勢をマイナスとして捉えるのではなく、大きな変化に適応していこう、新しい可能性に向けて楽しもう。そんな思いが伝われば嬉しいですね。

――サイトはどのようなアプローチで制作しているのですか?

今までの芸術祭をできる限りWEBで新しい形に落とし込み、来場するのと同じような感覚でアクセスしていただきたいという考えで制作しています。基本的な構造としては、毎年キャンパスで行っていたことをWEBで体験できるよう、八王子キャンパスを画面に出現させ、好きな場所をクリックするとそのコンテンツに飛んでイベントやショップへと案内するスタイルです。去年までの本祭で自分たちが経験したことを思い出しながら、こうしたらこの楽しさが再現できるかなとか、あれこれ考えながらつくっています。

――具体的にはどんな企画があるのでしょう?

Web芸術祭の企画のうちの1つ、「学内展示」では、100近くの団体がオンライン上にて展示を行います。多くの多摩美生による作品や動画の展示にぜひご注目ください。また、多摩美の芸術祭では毎年多くの企画団体がパフォーマンスを行っています。今年度のWeb芸術祭でも、多数の団体がWebならではの企画動画の配信を行いますで、是非ご注目ください。

たとえば中央広場をクリックすると、例年そこで開催されているフリーマーケットのサイトへ飛ぶのですが、今年はminneさんとSUZURIさんとの提携により、オンラインならではのフリーマーケットを楽しんでいただけるようになっています。中央ステージで開催していたライブは、サイトの中にステージに見立てた場をつくり、そこで多摩美生がつくった動画やパフォーマンスをご覧いただけるようにしました。

「模擬店局」や「花火局」、食事をした後に出るゴミの回収や分別を担当する「護美局」などは、オンラインとなるとその役割自体がなくなってしまうので、局員たちとアイデアを出し合い、新しい企画を考えました。まず、護美局が担当するキャンパスツアーがそのひとつ。入学以来ほとんど登校できていない今の1年生や、来年の受験生をはじめ外部の方々に、八王子キャンパス自慢の自然豊かな環境や充実した設備を、護美局のマスコットキャラクター「タマムシ」がご紹介します。

模擬店局は、クラブ紹介の動画をまとめる係。多摩美はどのクラブも個性豊かで、とても面白い活動をしているので、ぜひ皆さんに見ていただきたいです。それもどうせなら、美大生ならではのクリエイティブな形で発信したい。そこで「CM風」という条件を付けて、各クラブで動画をつくってもらいました。たとえば「テクノ研究会」ってどんなCMをつくるんだろう?とか、逆に、聞いたこともないクラブだけど見たら興味が沸いたなど、皆さんとの距離が少しでも縮まるきっかけになれば嬉しいですね。このクラブ紹介や作品展示などはTwitterで投票できるようにし、コンテスト形式にしたいと考えています。

花火局は、例年は最終日の締めに花火を打ち上げ、お疲れ様会を兼ねて盛り上げてくれるのですが、今年はそのノリのよさを生かして「芸祭ラジオ」を担当してもらう予定です。やはりライブ企画は多いほうが魅力があると思うので、できれば3日間の期間中、いろいろなゲストを招きながら、ずっと通しでライブ配信したいねと話し合っているところです。実際にどうなるか、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

企業やOB・OGのサポートが力に

――盛りだくさんの企画ですが、初のオンライン開催ということで、苦労した点も多かったのでは?

それはたくさんありました。特に、今まで年々引き継いできた手法が、まったく使い物にならなくなってしまったということが大きな痛手でした。7月に入ってオンライン開催が決定し、新しい企画や体制を4カ月で構築しなければならなかったので、その準備が本当に大変でした。我々もまったく無知だったのですが、WEB上で外部に発信するとなると、著作権やモラルなど、いろいろな制約が発生するんです。弁護士の方にお話を聞きに行ったり、参加団体に向けて著作権講習会を開いたりしながら、ひとつひとつクリアしていきました。

――技術面ではいかがでしたか?

企業に掛け合い、外部提携という形でご協力いただいています。最初は一から十まですべて自分たちでつくることを前提に進めていたのですが、コーディングやワイヤーフレームは企業と一緒につくりました。サイトをスクロールしていく作業とキャンパスを歩き回る行動を重ね合わせて考え、没入感を出すにはこうしたら面白くなるんじゃないかとか、いろいろアドバイスをいただいています。多摩美生はOB・OGとのつながりが強いのですが、ご協力いただいている企業も多摩美の芸祭実行委員だった方が多いんです。数年前の委員長や副委員長だった方とか。

――今回のWEB芸術祭は、これまで八王子キャンパスまで足を運べなかった遠方の方や、留学を志している海外の方にも、見ていただくチャンスが広がりそうですね。

そこはWEBの強みなので、皆ですごく考えました。きっと見てくださる方は増えるだろうし、その分いろいろな見方や意見があると思うので、細かいところまで注意を払わないといけないなと。そういう意味では怖さもありますが、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。

――では最後に、受験を控えた高校生の皆さんへ、応援メッセージをお願いします。

今は多摩美を含め、多くの大学生が本来の大学生活を送ることができていない状況です。特に美術大学では作品の制作時間や場所の制限が厳しく、望んだ環境での学びができないことに不満や不安を募らせている人も多いと思います。受験生の方も、きっとそうした不安があるでしょう。でも皆さんの努力や経験は、今後の大学生活で必ず報われると信じてください。我々も芸術祭を実行するのか最後の最後まで悩んだ末に、コロナ禍という壁を乗り越えて行こうと決意しました。こうした状況の今だからこそ、美術大学の感性や知恵を振り絞り、最大限に発揮して、新たな試みでこの時代を乗り越えて行く時だと思うのです。美術大学はどこも、皆さんの力を必要としています。受験を頑張ろうとしている皆さんが、美術大学で自分の秘めた力を存分に発揮する日が来ることを、我々実行委員は心から願っています。

芸術祭開催期間:11.1(日)から11.3(火・祝)
芸術祭公式URL: https://tamabi-artfes.com/
公式Twitter:https://twitter.com/Taufes_2020
公式Instagram:https://www.instagram.com/tauartfes2020/